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行動の研究と心理学

 

20世紀はじめに、ワトソンは内観法を重視したヴントの心理学に反対して「行動主義」を唱えました。ヒトのこころを理解するためには、内観に頼っていては十分でないとしたのです。

 

ワトソンによれば、心理学の対象は私的で主観的な内観報告ではなく、誰もが目で見て、触れて確かめることのできる行動こそがその対象でした。内観法による内観報告に基づく心理学では、十分な科学的根拠があるとは言えないと考えたのです。これを、「行動主義」といいます。

 

したがって、客観的に確認のできる刺激(Stimulus)と、その結果として起こる反応(Response)との結合関係、つまりS-R結合の関係を明らかにすることを心理学の仕事としました。この考え方に従えば、ヴントの内観主義では対象にならなかった新生児や、動物もその対象となりえますし、十分な訓練を受けていない一般の人でも実験への参加が可能になります。

 

しかし、ワトソンは打倒内観主義、打倒ヴントを急ぎすぎたあまり、「人がどう感じるか、何を考えるか」といった内的過程、すなわちこころの動きや働きを軽視しすぎました。そのため、行動主義は「こころなき心理学」「意識なき心理学」と呼ばれ、多くの批判を受けることとなりました。

 

行動主義が、心理学を客観的な科学として構築するために重要な役割を果たしたことは事実です。ヴントの内観法のメリット・デメリット、ワトソンの行動主義のメリット・デメリットをうけて、「他者からは見えないこころの内側(内的過程)」をいかに客観的に捉えるかが課題となりました。内観は内的過程と直接結びつくものではないので、ひとつの材料でしかありませんでした。

 

 

それでは、現代の心理学は「どのように」こころの働きを研究し、こころを「どのようなもの」だとしているのでしょうか。

 

現在の心理学では、こころを生体の〈より複雑な〉行動を支えている内的過程としています。物質的にいえば、それは脳の働きです。心理学では、生体が示す特定の行動が、どのような条件で発現し、どのような条件で抑制されるかをさまざまな実証的データから明らかにして、その分析からそうした行動を支えている内的過程(こころ)のメカニズムを探ろうとしています。

 

 

ところで、生体の〈より複雑な〉行動を支えている内的過程のおける〈より複雑な〉とはどのようなことでしょうか。単細胞生物と高等の哺乳類で考えてみましょう。

 

たとえば、アメーバにこころはあるでしょうか。アメーバにある特定の刺激を与えると、その刺激に合わせて同様の行動をします。ワトソンの行動主義的にいえば、S(刺激)とR(反応)が完全に一致しているわけです。

 

では、ヒトならどうでしょうか。ある特定の刺激に対して、その時折で反応が変わること、また幾時間かしてから反応が起こることもあります。このように、特定のS(刺激)に対するR(反応)が異なるのです。そのため、S(刺激)とR(反応)のあいだに、何らかの内的過程を想定する必要が出てきます。これが、「こころ」とされるものです。

 

しかしながら、ではどの進化レベルの生体にはこころがあって、どの進化レベルではこころがないのかを明確に線引きすることは困難です。したがって、心理学の研究では、さまざまな進化レベルの生体をその対象としています。

 

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