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意識の成立とメタ認知

シンボル機能(シンボル機能参照)の発達により、外界の情報は保持されるだけでなく、経験を通して組織化されて意識が構成されていきます。

 

バウアは、生後20日〜100日の乳児を対象として、次のような実験を行いました。ぬいぐるみを見せた後、衝立でそれを隠し、乳児には見えない状態でそれを隠してから衝立を外すという実験です。この実験から、生後20日の乳児は3秒以上ぬいぐるみが見えなくなると、それを隠していない(そのままにしてある)場合の方が心拍数が上がり、逆に生後100日の乳児は15秒以内であればぬいぐるみが隠されていた場合の方が心拍数が上がったのです。

 

つまり、生後20日の乳児は3秒でぬいぐるみがあったことを忘れていたため、それを再び見たことに対して驚きを覚えましたが、生後100日の乳児は15秒まではぬいぐるみがあったことを覚えていたため、それ未満の時間のうちはぬいぐるみがなくなったことに驚いたのです。

これは、生後100日の乳児は見えなくなったもの(衝立で隠されたぬいぐるみ)の情報を15秒ではありますが保持していたということになります。このような、見えなくてもモノは相変わらずに存在しているという概念は永続性の概念と呼ばれます。これは、シンボル機能の発達とともに1歳半ごろには完成するようです。

 

自分自身について意識すること、つまり自己意識をもっているということは、意識の形態のなかで最も際立った、そして最も特徴的なもののひとつと言えます。このような自己意識を行動の面から測定する方法のひとつとして、自己鏡映像認知があります。これは、鏡に映った自分を自分だと認識できるかというものです。

一般に、サカナやトリでは自己鏡映像認知は成立しません。トゲウオの場合ですと、鏡に映った自分を敵とみなして攻撃し、しまいには攻撃の衝動が本来とは別の方向に向かい、砂ほりをはじめてしまいます。このような、本来の方向とは別の方向に向かって起こる行動を転位行動と言います。

一方、チンパンジーは多少の時間を要して自己鏡映像認知が成立します。最初は攻撃行動や探索行動(それが何なのかを調べる行動)をとりますが、徐々に映っているのが自分だと気付いているような行動をとりはじめます。ヒトの場合も、2歳くらいまでには自己鏡映像認知が成立すると言われています。

 

以上のような、永続性や自己意識の側面から意識の発生を分類してみると、大まかに3つの段階に分けることができます。

@反射的・本能的な感覚支配的行動のレベル:意識の存在を認める必要がない。

A外界からの刺激を内的に保存、組織化して認知的な行動が可能なレベル:経験から心的なモデル獲得し、それに基づいた問題解決や適応が可能になる。外的な物事に対する意識はもっているが、自己意識はまだない。

B自己意識が形成されるレベル:自分自身を認知する主体としてとらえつつ、また自分自身を客観的に認知の対象ともとらえることができる。

この考え方は、自己を認知する主体として出発し、外界への適応を行い、認知の対象としての自己に帰ってくるという意味で再帰的モデルと呼ばれています。

 

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