Sponsoerd Link

言語習得、意識と行動

 

記号として取得された言語は、個体間(人と人)のコミュニケーションの道具として使われるだけでなく、こどもの発達に伴い個体内コミュニケーションも可能にします。個体内コミュニケーションとは、心のなかで「あー、あれやらなきゃ」「これはするなっていわれたなー」と、意識の中で自分に言い聞かせたり、自分と会話したりすることを指します。

 

 

発達に伴う言語習得には、シンボル機能シンボル機能参照)といった重要な側面以外にも個体内コミュニケーションによる自己調整機能の獲得という側面もあります。

 

ルリヤらの実験では、1歳半ほどのこどもは外部からの言語指示に反応して動作を開始できるが、その行動をやめるよう指示しても途中で止めることができないことがわかっています。それが3,4歳くらいになると、外部からの言語指示を毎回だしてあげれば、それに正確に従うことができるようになります。しかし、この頃のこどもは、自分で行動を中止する命令(たとえば「やめ」)をつぶやいても、行動を止められないことがしばしばあります。

 

これは、言語的な自己調整機能を獲得できていないからだと考えられるわけです。5,6歳を過ぎるころには、自分自身のことばによって正確に行動をコントロールできるようになります。

 

 

また、言語習得によって、認知的な行動(考える・覚える)も可能になります。つまり、外界のいろいろな事柄を言語化し、それを個体内でやり取りしながら情報を保持(記憶)したり操作(新しいアイディアの創造など)をおこなったりしながら問題を解決していきます。この過程も、個体内コミュニケーションと呼べるでしょう。

 

 

以上の点を考慮すると、ヒトは言語記号による個体間コミュニケーションによって意思の疎通をはかる一方で、個体内コミュニケーションの過程で情報の保持や操作をおこなって問題を解決するとともに、自己調整機能による行動の制御もおこなうということになります。高等な哺乳類の場合、言語を持っていなくても意識の存在を認めることができます。したがって、言語は意識の必要条件とはいえませんが、ヒトの最も明瞭な意識状態に言語(主に個体内コミュニケーション)が大きく関わっているのは確かです。

 

 

現在の心理学では、意識を「ヒトや高等な動物が正常な覚醒状態にあり、環境の刺激に対して応答し得る状態、ないしはそうした場合の脳の活動状態」としています。刺激に対する反応の有無だけでは意識を想定する必要がないため、本能行動や反射的行動といった感覚支配的行動感覚支配的行動参照)は意識を伴わないものをされています。意識が伴うとされる行動としては、注意を集中させたり、目的をもったりして遂行される行動や、自己の感情状態や行為の反省を伴う行動がその例です。

 このエントリーをはてなブックマークに追加 
Sponsoerd Link

HOME プロフィール お問い合わせ