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他者のこころと「心の理論」

 

自己意識(意識の成立参照)が成立することがわかると、次は他者のこころをどれほど理解できるのかということが問題になってきます。

このような問題については、チンパンジーがヒトのこころを理解できるのかを明らかにするためにプリマックらによってはじめられました。その結果、チンパンジーは数々の場面においてヒトのこころの状態を理解できることがわかりました。

このような、他者のこころの状態を理解し予測するこころの働きを「心の理論」と呼んでいます。この呼び方は、あくまで比喩的なもので、学術的ではありませんが、重要なポイントとなります。

 

心の理論を考えていくと、「メタ認知」についての問題が出てきます。メタ認知とは、「自己の通常の認知活動を監視して、目標に沿って制御する働き」のことです。つまり、自分がいまどう考えて、なにを感じているかを客観的に観察し、もし目的にそぐわないことを考えていたらそれを注意してやる働きになります。

 

一般的に、心の理論の発達を測定するためには誤信念課題(サリーとアンの課題)が用いられます。ここでは、まず、サリーとアンの人形が見せられます。その後、サリーはビー玉をサリーのカゴに入れてその場を立ち去ります。サリーが立ち去った後、残ったアンはビー玉をサリーのカゴからアンの箱に移してしまいます。ここまでを見せた後、いくつかの質問をします。

 

@ビー玉はどこにあるか(答えは「アンの箱」)。

A前にそれはどこにあったか(答えは「サリーのカゴ」)。

Bサリーはビー玉を見つけようとどこを探すと思うか。

 

@とAの質問については、幼児でも比較的間違えることなく答えることができます。しかし、問題はBの質問です。もし、自分がみたまま「ビー玉はアンの箱にあるから、サリーはアンの箱を探す」と答えれば、サリーはアンがビー玉を移し替えたところを見ていないからそれを知らないということを理解できていないことになります。逆に、「サリーはアンがビー玉を移し替えたことを知らないからサリーのカゴを探す」と答えられれば、サリーの状態を適切に考えることができています。後者の場合、他者のこころ(考え)を適切に予測できていると言えるでしょう。健常児でも、この課題が正しく解凍できるようになるのは4歳ころになり、自閉症児ではそれよりも著しく遅いことが知られています。

 

この課題では、サリーがどう思っているかを考えることが重要でした。これは、他者のこころを思い描くということです。反対に、自分のこころに何かを思い描く方がよっぽど簡単でしょう。この、自分のこころに何かを思い描くこと一次表象作用と呼びます。先の課題のように、自分ないしは他者が何かを思い描いている状態を思い描くという入れ子状になったもの二次表象作用と呼びます。この二次表象作用が、メタ認知に該当するものです。

 

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