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発達と変化A〜初期経験と学習に適切な時期〜

 

「三つ子の魂 百まで」というように、発達初期の経験は大きな影響を及ぼします。その際たる例は、刷り込みです。アヒル、カモなどの雛は、生まれて最初に見た動くもののあとを追いかけるようになったり、愛着行動を示したりします。

この刷り込みには、それが可能な時期のリミットである「臨界期」があり、エサを与えるなどの学習が必要なく、一度獲得されれば修正が効かない(非可逆性)といった特徴があるとされていました。ですが、その後の多くの研究から臨界期は刺激の影響を受けやすいというだけで、「敏感期」とした方が適切であり、多少であれば修正も効くということがわかっています。

 

発達初期の経験は、知覚にも影響を与えます。生まれつき目が不自由な場合、手術でその機能を回復させても、根気よくリハビリに取り組まなければ目によって知覚できるようにはなりません。特に、聴覚の場合は、ある程度発達してからでは、聴覚の機能を獲得しても聞いたことが理解できない場合もあるようです。単純に、生育初期に適切な視覚刺激が与えられなかっただけでも、視力の低下を引き起こすことがわかっています。

 

ですが、初期経験がすべてなのかと言われれば、そうではありません。心理学者のゲゼルらは、ワトソンの極端な経験主義(感覚支配的行動以外のすべての行動は学習によって獲得されるとするもの)に対抗して、成熟優位説を唱えました。これは、学習をするにも、適切な段階まで発達していなければ学習は成立しないというものです。ゲゼルらは、遺伝的な部分が同一な一卵性双生児を対象とした双生児統制法を発案し、その実験によって成熟優位説を証明しました。一方の子どもにだけ訓練をさせ、もう一方はその期間遊ばせておいても、対象とする行動を学習するのに適切な時期になれば、訓練されてない子どもは訓練されていた子どもよりも極めて短期間で同じ水準まで学習することが分かったのです。この、学習に適切な発達をレディネス(学習準備性)と呼びます。

 

しかし、この研究から「レディネスを獲得するまでなにもさせなくて良い」と言うことはできません。なぜなら、訓練されていない方の子どもも、すべての経験が遮断されていたわけではないからです。対象とした行動の訓練こそされていませんが、日々遊んでいるなかで、さまざまな経験をしていたことは言うまでもないでしょう。そのような経験によって、レディネスが獲得されることがわかっています。

つまり、遺伝的な要因、誕生前後の刺激作用、経験的要因(遺伝と環境〔表 行動発達における要因の分類〕参照)のすべてによってレディネスは獲得されるのです。もちろん、特定の行動の獲得には、レディネスが獲得された適切な時期に学習を行うことが好ましいですが、そのレディネスは、さまざまな経験から獲得されるものだということを忘れてはいけません。

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