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感覚支配的行動

 

刺激と反応の関係が直接的で単純な感覚支配的行動のひとつとして、反射的行動があげられます。ヒトや動物には、生得的に組み込まれた多数の反射的行動があります。こうした反射的行動に基づいて、内部・外部の環境の変化に対して種々の適応を行っています。

その例としては、口内の刺激に対する唾液の分泌や、心臓や血管等の生命維持に関係する反射、また身体の姿勢を維持することに関係する多数の姿勢・運動反射行動があげられます。

 

 

下等な動物(注1)やヒトの新生児・乳児では、こうした反射的行動がその適応の大部分を占めています。新生児や乳児の反射的行動の中には、生育初期にだけみられる原始反射と呼ばれる特有の反射的行動もあります(表1)。

 

 

原始反射は成長とともに消失しますが、中枢系神経系に障害がある場合には、原始反射が消失しない場合があります。

 

また、乳児は原始反射の他にも、周囲の目立つ刺激に対して自分の身体や感覚器官を向ける定位反射を備えています。誕生直後の新生児でも、音源の方向に頭を向けたり、視野の中で適度に変化している部分を注視したりします。

 

一方、突然の大きな音や、急に身体の支えをなくして落下させるような刺激に対しては、モロー反射(表1参照)のような防御性反射を行います。定位性反射は、防御性反射の抑制を受けながら、やがてその対象に手を伸ばし、いじるなどの、外界への積極的な探索的行動へと展開していきます。そのようにして、子どもの世界は広がっていくのです。

 

動物、とくに下等な動物が示す一見複雑な行動パターンである本能行動も、生得的に規定されていることが多いとされています。ただし、本能行動は反射的行動に比べて、生体の内分泌などの内的環境にも大きく依存します。たとえば、トゲウオのオスの求愛はジグザグダンスっと呼ばれる行動です。その求愛行動は、成熟したメスのふくらんだ腹部が信号刺激となって引き起こされ、その行動に対してメスが反応し、その反応に対してまたオスが反応する、という流れが出来上がります。

 

比較行動学者のアイブルーアイベスフェルトによれば、ヒトが出会った時に行う挨拶も本能行動です。挨拶は文化圏や人種によって、握手、お辞儀、キスやハグなどその行動様式はさまざまですが、その基本的行動パターンは同じで、ヒトという種に固有な生得的行動だと考えられています。ヒトと出会ったときには、お互いにまず目を見つめてから、1/6秒間ほど眉を上げ、それから微笑むのです。この一連の行動によって、お互いの攻撃性を弱めるとされています。

 

 

ヒトやその他の動物は、反射的行動や本能行動を含むさまざまな感覚支配的行動を数多く備え、それによって環境の変化に対応しています。ですが、こうした生得的に組み込まれた行動様式だけでは、その適応範囲は限られており、多様な環境の変化には対応しきれない場合もあります。

 

 

1)高い認知能力をもつ動物を高等な動物、比較的認知能力が低い動物を下等な動物としています。決してヒト以外の動物を見下した表現ではありません。

 

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