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ストレスの概要

日常の中で度々耳にするストレス。頻繁に使われる言葉でもあり、人は何かしらの外的要因が掛かったりすると「ストレスが溜まる」と言います。
心理学の世界でもストレスという概念は大いに注目されており、ストレスとわたしたちのこころは密接に関連していると考えられています。また、ストレスの理論やストレス対処の理論といったものも大系化されており、非常に重要な概念として取り扱われているのです。

 

心理学の世界では、ストレスを以下のように定義しています。
「一連の心理生理的なプロセスであり、外部環境での出来事や生体内での反応・状態の変化につれて、様々な要因が関与して起こる一連の複合的現象。」

 

また、この定義の中にある「外部環境での出来事や生体内での反応」を「ストレッサー」と呼んで、ストレスと区別して考えています。「ストレス」という概念を、ストレスを生物に与える何らかの刺激と、ストレッサーにより引き起こされる心理生理的プロセスとに分別しているのです。

ストレスの理論

ストレスについての学説は、有名なものがいくつかあります。
最も知られているのがセリエのストレス反応説です。他にもライフイベント理論といったものがあります。順に見ていきましょう。

 

■セリエのストレス反応説
セリエは多様なストレッサーによって誘発された非特異的な生体防衛反応をストレスと定義しました。そして、その反応を「汎適応症候群」と名付け、生体にストレッサーが加えられると生理的症状が出現すると考えたのです。汎適応症候群は胸腺・リンパ線の萎縮、胃・十二指腸の潰瘍、副腎皮質の肥大の3つが見られることが特徴です。また、ストレスによる反応プロセスは3つの段階を経るとしました。

 

1.警告反応期
有機体が有害刺激の存在に気付きストレッサーを感知すると、警告反応が起こり、ストレッサーに抵抗していくための準備態勢が整えられます。それが警告反応期です。
これには2つの反応があります。1つは「ショック相」といい、ストレッサーが加えられた直後に一時的に低血圧や低血糖、低体温などにより身体の抵抗力が低下してしまう反応です。もう1つは「反ショック相」で、防衛反応としてアドレナリン分泌の増大に伴う抵抗力が高まるという反応を示します。
2.抵抗期
ここでは、ストレッサーに対する抵抗力が正常時より増加、維持されて、ストレッサーに対して様々な対処の反応がとられます。対処行動の範囲内で生体内の歪みが修正され、通常、適切な適応状態に導かれていく段階とされています。対処の手段として、生体はストレッサーと戦うか、逃げるかのどちらかの反応をとることになります。
3.疲弊期
長期に渡るストレッサーとの闘いに晒されて、抵抗する力や適応に必要な生体の力が使い果たされてしまい喪失する段階です。この疲弊期の状態が維持すると汎適応症候群を引き起こす可能性が増大し、最終的に死に至ることになると考えられています。

 

■ライフイベント理論
社会的または生活上の出来事を生活ストレスとして取り上げ、それが病因となる可能性があると考えたのがライフイベント理論です。この理論は人生に変化を起こさせるような出来事の震度を、免疫研究の定量的基礎として計量することを試みています。

 

基本構成は43項目のライフイベントから成り立っています。結婚を50、配偶者の死を100として設定し、得点が高いほどストレスが高いとしました。この得点を震度と定義し、調整するのに必要な時間と集中度の長さとして各ライフイベントに得点を割り振っています。そして震度がある一定量に達すると様々な障害の原因となると考えました。

ストレス対処の理論

ラザルスが提唱した理論で、ストレス対処の理論があります。
この理論では、認知的評価は2つの側面があり、これらの評価の結果として情動的ストレス反応が生じると考えました。つまり、対処可能だと認知されるストレッサーにはストレスは生じないと考えるのです。

 

この理論で重要な概念が「認知的評価」です。これは心身の健康のために意義をもつ出会いと、その面をカテゴライズする過程をいいます。
認知的評価は以下の2つに分けられます。

 

・一次的評価
環境からの圧力を重大かつ脅威として捉える個人の判断が一次的評価です。
一次的評価は「無関係の評価」、「無害-肯定的評価」、「ストレスフルな評価」と、さらに3つに分類されます。無関係の評価とはそのことに関わっても失うものも得るものもなく、何の意味ももたないという評価です。無害-肯定的評価は物事や出会いの結果が肯定的であると解釈されるときに生じます。そしてストレスフルな評価は害や喪失、脅威、挑戦などを含むものであり、何らかの損害を受けていたり、まだ起きていないが予想されるものを評価します。
・二次的評価
一次的評価に対して対処可能かどうかの評価が二次的評価となります。
危険に陥っているとき、どのような対処方法が可能か、その対処方法で思った通りに成し遂げられそうか、特定の手段を適用できそうかという期待などが考慮されている評価です。

 

上記2つの評価の段階を経て、人は「再評価」というプロセスを行います。
再評価は最初の評価に連続していて、それを修正したものです。環境からの様々な新しい情報や、自分自身の反応から得た情報に基づいて変化することが特徴です。
そうして再評価を元に、実際の問題に対して対処していくことを説明しました。

 

一次的評価、二次的評価、再評価含む認知的評価には影響を受ける種々の要因があります。
まず挙げられるのは人的要因です。これはコミットメントとビリーフに大別され、前者はその人にとって重要な意味を持つものを表し、特定のストレスフルな事態に対し、心理的に何が賭けられているかを決めるものです。一方で後者は個人的に形成された、あるいは文化的に共有された認知的形態を意味しています。
その他の要因として、新しい状況に直面する新奇性、予測性、出来事の不確実性、時間的要因、曖昧さ、タイミングなどが挙げられます。
これらの要因の影響を受けながら、認知的評価は常に変化していくと考えられているのです。

 

最後に、ラザルスが考えたストレス対処類型をご紹介します。
ラザルスは認知的評価を経て実際にストレスに対処するにあたり、いくつかのパターンがあることを説明しました。これらはどれが好ましく、どれが好ましくないというものではなく、単純に対処を類型化したものです。詳細は以下の通りになります。

 

・計画型:問題解決に向けて対処したり、色々な解決法を検討
・対決型;危険や失敗を承知で問題や相手にぶつかる、状況変化に向けて積極的に努力
・社会的支援模索型:問題解決のために他人や相談所などに援助を求める
・責任受容型:誤った自分の行動を素直に自覚し反省、謝罪する
・自己コントロール型:自分の感情や考えを面に出さない、問題に慎重に対処
・逃避型:問題から心理的に逃げ出すことを考えたり、忘れようとする
・隔離型:問題は自分とは関係がないと思う、問題や苦しみを忘れようとする
・肯定的再評価型:困難を解決した経験を高く評価、困難の後には発展・進歩があると思う

ストレスと心身症

最後にストレスと関係の深い心身症について触れておきます。
心身症とは心理社会的要因がその発症や経過に関与して起こる身体的疾患です。特に呼吸器系、循環器系、消化器系が情動の影響を受けやすく、種々の諸症状が引き起こされます。

 

心身症の診断基準は以下の通りです。
まず、その症状の発現に自律神経系、内分泌系、免疫系が関与していることです。また、心理社会的要因と身体的障害の間に時間的関連性が見出されることが条件とされています。その上で、身体的症状を主とする神経系やうつ病などの精神疾患を除外します。

 

心身症には次のような疾患が含まれます。
呼吸器系障害では気管支喘息や過換気症、循環器系障害では本能性高血圧や片頭痛などです。また、消化器系障害においては胃潰瘍や胃炎などが当てはまります。

 

「ストレス社会」と称される現代において、ストレスを原因とした心身症の発症率はもはや見逃せないものになってきています。このような症状を放っておいた場合、うつ病やその他精神疾患を引き起こし、社会生活に支障をきたしてしまうといった経過を辿ることもあります。精神疾患の全てにストレスが関わっているわけではありませんが、精神疾患を考える上で切り離せない要因なのです。

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