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気分障害の概要

気分障害とは、気分に関する障害を有する精神疾患のことで、ある程度の期間に渡り持続する気分の変調により、日常生活に著しい支障をきたします。症状の基本は感情の障害にあり、他に思考障害、意欲・行動の障害、身体症状などを伴うことが特徴です。
また、気分障害は躁病相とうつ病相が繰り返される双極性と、うつ病相のみからなる単極性が存在します。つまり、うつ病や双極性障害などは広義のこの名称に当てはまるのです。

 

発症率はこの他の精神疾患と比べても多く、世界の全人口の約4%の人が気分障害を発症しているというデータがあります。また、全自殺者の中でも若年層の死因として上位に上がるなど、その実態は極めて深刻です。

 

現在ではうつ病は広く知られる精神疾患となっており、罹患率は年々増加傾向にあります。また、その種類も多様化しており、抑うつ、産後うつ、新型うつなど、どんどん新しい病型が登場しています。そのため認知度は向上しましたが、気分障害の全体像はまだ広く知られていないといえるでしょう。

 

世界保健機関では、気分障害は治療や予防が可能だとし、発症が疑われる場合は信頼できる人に話すことが大事だと指摘しました。また、適切な医療機関にかかることも大切だとして、啓蒙を行っています。

診断基準

DSM-IVに規定されている診断基準は以下の通りです。

 

■大うつ病エピソード
・以下の症状のうち5つ以上が2週間の間存在する。少なくとも1つは抑うつ気分、または興味や喜びの喪失である
◇ほとんど1日中、ほとんど毎日抑うつ気分
◇ほとんど1日中、ほとんど毎日の興味・喜びの著しい減退
◇著しい体重減少または増加、あるいは食欲の減退または増加
◇ほとんど毎日の不眠または睡眠過多
◇ほとんど毎日の精神運動性の焦燥または抑止
◇思考力や集中力の減退、または決断困難   など
・症状は混合性エピソードの基準を満たさない
・症状は著しい苦痛あるいは社会的、職業的な機能の障害を引き起こしている
・症状は薬物の乱用や身体疾患によるものではない
・症状は死別反応ではうまく説明されない

 

■躁病エピソード
・気分が異常かつ持続的に高揚し、開放的または易刺激的ないつもとは異なった期間が少なくとも1週間持続する
・気分の障害の期間中、以下の症状のうち3つ以上が持続している
 ◇自尊心の肥大、または誇大
 ◇睡眠欲求の減退
 ◇普段より多弁
 ◇観念奔逸、またはいくつもの考えが競い合っているという主観的な体験
 ◇注意散漫   など
・症状は混合性エピソードの基準を満たさない
・気分の障害は職業的機能や社会活動、または人間関係に著しい障害を起こしている
・症状は薬物の乱用や身体疾患によるものではない

主な症状

気分障害はうつ病相と躁病相がそれぞれ対極のような症状を呈することが特徴です。
それぞれの主な症状を「感情」、「思考」、「欲動」、「身体症状」の4つに分けて記します。

 

■うつ病相
1.感情
抑うつ気分、非哀感、絶望感が続き、物事を悲観的に捉えます。抑うつ気分は朝のうちに強く、夕方から軽減されることが特徴です。
2.思考
思考抑制があり、決断が下せなくなったり集中力が低下したりします。思考内容は自責的・マイナス思考であり、重症の場合は妄想を抱くこともあります。
3.欲動
意欲が低下し、動作すらも緩慢となります。身の回りのことすら面倒だという気が常に付きまとう状態です。
4.身体症状
消化器症状が多くみられることが特徴で、食欲減退、便秘、口渇などが高頻度で出現します。不眠もあり、早朝覚醒はその典型例です。

 

上記症状が主な症状となりますが、患者が実際に訴える内容や示す行動をいくつか列挙します。
まず、抑うつ気分を訴える場合は、気が沈む、おもしろくない、喜怒哀楽の感情が分からないと話すことが多いようです。また、ひとりでに涙が流れるといったこともよく聞かれる症状です。
思考の抑制に関しては考えが浮かばない、考えがまとまらないといった言葉で訴えられることが大半を占めます。具体的な行動面では返事に時間がかかったり、精気のない話し方が出現します。また、思考の面の1つとして、重度の場合に妄想を抱くこともあります。この妄想は罪業妄想、心気妄想、貧困妄想など多岐に渡りますが、どれも自責的な内容が多く含まれることが特徴です。
欲動での主な行動例は、何をするのにも時間がかかったり、日常的なことをするのも億劫で寝てばかりといったことが顕著に見られます。これらはやる気がでない、気力がわかないといった意欲の低下が原因となっています。

 

■躁病相
1.感情
気分は爽快感に溢れ、楽観的に物事を捉えます。また、周囲に対し易刺激的・攻撃的になることも特徴です。
2.思考
新しい観念が次々とわき起こる観念奔走が顕著に見られます。内容があれこれ移動し、何を話しているのか分からなくなることもあります。
3.欲動
高度になると精神運動興奮の状態となり、行動がまとまらなくなってしまいます。その結果、社会的な逸脱行為が問題となることもあります。
4.身体症状
不眠を生じるが本人はこれを苦痛と感じません。自覚的には身体が軽く感じられ、疲れを知らない状態が続きます。

 

躁病相においての患者が示す行動は、概ねうつ病相を対極にしたものがほとんどです。
例えば気分は常に爽快で、上機嫌で良く笑う、楽観的な思考などが見られます。また、注意や関心は次々と移り変わり、1つのことに集中できなくなるといった事象を訴える患者も多いようです。
その他、躁病相でも妄想を抱くことがありますが、こちらでは誇大妄想が主な内容となります。

治療法

気分障害の主な治療法は薬物療法と精神療法になります。
多くはこの2つを併用して治療が行われており、その方が早く寛解し、再発も少ないとされているためです。

 

薬物療法においては主にSSRI、SNRI、三環系抗うつ薬、抗そう薬が選択的に用いられています。その背景として、気分障害の病因にモノアミン欠乏仮説があるからです。モノアミンとはセロトニンやノルアドレナリン、アドレナリン、ドーパミンなどの神経伝達物質を指し、これらの過剰または不足が有力な要因だと考えられています。

 

精神療法では主に認知行動療法が適用されます。不安への対処として認知行動療法は有効であり、気分障害を治療するのに最も適しているとされているのです。これの他に対人療法やアニマルセラピーなども効果があるとされていて、患者の症状の具合によって様々な技法を使い分けています。
また、気分障害の主にうつ病相に関しては軽い運動なども良いとされており、まず薬物療法にて気分を安定させた後に、ウォーキングなどの軽い運動を取り入れることも有効な手として実行されています。

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